2010年12月22日
大学ブランディングのための"パーセプション・マネジメント"
投稿者:博報堂教育コミュニケーション推進室
大学評価・ランキングと情報公開化の中で
数年くらい前から「選ばれる大学」「強い大学」「生き残る大学」などの見出しとともに、大学を数値等でランキング化し、相対評価する傾向が強まっている感があります。
「なぜ、A大学が我が大学よりも上位なのか?」、「昨年よりこんなに順位を下げたのはなぜ?」などのもどかしさを大学関係者から耳にすることもしきり、です。
「入学難易度」とか「教員の論文引用数」等、特定の根拠あるデータであれば、それは大学を評価する指標のひとつとして有効です。研究者の世界で、あるいは入試情報の世界で、さらには経営数字の観点で、なんらかの数的基準に基づく客観的評価やランキングも必要でしょう。しかし、それらの複数の観点データを恣意的な計算方法やウェイトで総得点化、順位づけして並べてしまうことに、違和感を覚える大学関係者の方々も多いのではないでしょうか?「総合ランキング化」は本当に難しいことだと思います。
そうした動きを眺めつつ、私たちがずっと気になっていたのは「では、実際、ふつうの生活者は、どんな観点から大学の良し悪しを見定めようとしようとするのだろうか?」ということでした。何が評価を定める大切なポイントなのだろうか、と言い換えても構いません。
今回、公表させていただいた調査結果はそうした戦略的研究の一部です。
リスペクトされ、信頼され、期待を持たれる大学へ
特定の研究領域ということではなく、そもそも社会全般への大学のブランディングの目的とは何でしょうか? 究極的には「その大学が、大学に関心を持つ方々からリスペクトされ、信頼を持っていただき、その活動に期待を寄せていただけること」に尽きるのではないでしょうか。国内だけでも千を越える大学・短大が存在します。各々が置かれた立場・位置づけにより、世界を、国内全国を、特定地域などを対象に捉え、提供価値を伝え、人々からキチンと認識してもらうこと。それに向けての、各大学の日々続けられる努力こそがブランディング活動だと考えます。
特定の観点の評価ランクに一喜一憂し、ましてや、受験生の"あやふやな知識"に基づく丸付けのイメージ調査結果に翻弄されるのでは、骨太の本質的な大学ブランディングは出来ず、かえって、せっかくの改革をリードする教職員の皆さんが疲弊するだけの結果となってはいないでしょうか。
ステークホルダーのパーセプションを測定すること
それでは、自分たちの大学の"社会的評価"は誰の、どのような評価から判断すべきなのでしょうか。入試戦略との関わり、卒業生の進路支援や企業連携等の多くの関係課題と併せ、まずそこから考えていく必要があります。その上で、「そうした方々は、我が大学について何を知って、理解してくれているのだろうか。先入観や誤解のミスリードはないのだろうか」ということを考え、評価された中身を仔細に、謙虚に見つめていくことが重要だと考えています。私たちは、これは従来の「大学イメージ調査」とは全く別次元の『大学パーセプション・マネジメント調査』と捉えています。
人々がその大学がどう捉えられるか、は当然"コントロールできない"のですが、"パーセプション"のマネジメントは総体的に、戦略的に実施しなくてはなりません。マネジメントとは、大学側の現状改善へのプロセス(フィードバック)という意味も含みます。
重要ステークホルダーを特定化(共有化)して、知識やパーセプション[=認識]について調べていくこと。その過程ではステークホルダーの中でも、大学との関わりや属性の相違で大きな違いが出現します。
今回実施した調査でも、ふつうの企業・商品と異なり、「大学に入学・卒業した経験のある方かどうか?」など情報量でも関心度でも大きな差異を生む結果となっています。また「大学受験生を持つ保護者の方」、「ビジネスパーソンとして大学の研究情報や、大学からの採用ということに関与があるかどうか」、などにより、大学を評価するポイントも、各大学への評価も違いが生じています。
"学士力"自己基準づくりの流れとブランディング
同時に、今後、大学の卒業生"品質"(学士力)という観点の重要性が高まる趨勢があります。全入に近い状況、AO/推薦入学が増加している中で、卒業生が獲得しているはずの習熟領域・水準を大学・学部毎にキチンと精査していこう、という動きです。
今回の調査でも、大学生の学力、卒業生のクオリティへの懸念を、生活者がどの程度抱いているかの測定結果がありますが、大学を評価する視点として、やはり、「その大学の卒業生が社会で活躍しているかどうか」は大きな評価視点のひとつであることが検証されました。「卒業要件」を気にされる方も少なくありませんでした。
入試広報を重視した一部大学では、「高校生は潜在顧客、学生は顧客」と考える向きもあります。しかし、
入学したら、彼ら彼女たちこそが「大学の主体的な主役」であり、卒業生こそが大学のブランドを左右する大切な存在です。在校生と卒業生が"誇りと喜び"を持ち、勉学に、大学生活に励み、社会人となってから母校の良い評判や、新たな価値を拡げられること。私たちはそのためのプロセス支援、触媒として、これからも励んでいきたい、と考えています。
(博報堂教育コミュニケーション推進室 リーダー 梅本 嗣 (うめもとみつぐ) )
















